涙腺

 がもろい人を、これほどうらやましく思った三日間はなかった。
 こみ上げてくるものが、最後の最後まで壁を突き破ることはなかった。
 他人の子は言った、「悲しいことは、涙と一緒に流れていかないんです」
 私の子が言った、「酒でさえ、苦しみを腹の底に押し込みことは出来ないから」
 積もり積もった想いは、胸の奥で修羅場色に渦巻いていくばかり。
 
 メンヘラ一歩手前……片足突っ込んでいるわが身を振り返るとつくつく思う、せめて泣ける大人になりたかったなぁ……と。